心臓や血管の疾患を中心に行う
「循環器内科」
循環器内科は心臓や血管の疾患を中心に診療を行う科目です。身体にとって非常に重要な器官であり、障害が起きてしまうと命に関わる場合も少なくありません。そのため、早期に発見して治療を開始することが非常に重要です。少しでも以下のような症状がみられましたら、お早めに循環器内科を受診ください。
- 循環器内科でよくある症状
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- 胸に強い痛みを感じる時がある
- 胸に締めつけられるような違和感を覚えることがある
- 胸やけがする
- 散歩など軽い運動でも胸が苦しくなり、休むと楽になる
- しばしば鼓動が速くなったり、強く感じたりする
- 動悸が治まらない
- 脈が乱れたり、飛んだりする
- 横になっている時に息苦しくなる
- 運動時の息切れが以前よりもひどくなった
- 冷や汗が出る
- 手足が冷たくなる
- 尿の量が減った
- 失神した(意識を失った)
- 血圧が高い、あるいは低い状態が続いている
- 健診などの心電図や胸部X線の検査で異常を指摘された
- など
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- ※今までに体験したことの無い激しい頭痛、胸の痛み、吐き気、嘔吐などが生じたときは、脳卒中や心筋梗塞など重篤な疾患の可能性があります。一刻を争いますので急いで救急車を呼ぶようにしてください。
- ※このほか心筋梗塞では広範囲で痛みが生じるため(関連痛)、腕や肩、歯、顎が痛いと感じる方もいらっしゃいます。
- 循環器内科で診療する主な疾患例
- 高血圧、不整脈(心房細動、期外収縮 など)、動脈硬化性疾患(閉塞性動脈硬化症 など)、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、狭心症、心筋梗塞、心不全、心臓弁膜症、大動脈瘤、起立性低血圧 など
心臓や血管など循環器に関わる疾患は長期にわたって状態を管理していく必要のあるものが多く、その間、患者さまの体調の変化や病状の変化などに合わせて、薬の調節などを丁寧に行っていくことが求められます。当院の循環器内科では日本循環器学会認定の循環器専門医である院長が患者さま一人ひとりに寄り添って、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病の段階からの各種循環器疾患の発症予防、症状の改善、重症化の抑制など、患者さまの状態に即した診療を行っていきます。その結果、症状の状態が悪化している、手術が必要となった場合は連携する専門の医療機関をご紹介いたします。
主な循環器疾患
狭心症・心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞は「虚血性心疾患」と呼ばれるもので、心筋(心臓の筋肉)に必要な酸素が行き渡らなくなることによって発症するものです。
狭心症は心筋に酸素を届ける冠動脈の血流が低下することで、動悸、息切れ、胸の痛みや圧迫感などの症状が一時的に現れるものです。多くの場合は動脈硬化による血流障害が原因ですが、その他に冠動脈の痙攣や解離、大動脈弁狭窄症などが原因となることもあります。
種類が多く、症状による分類(労作性狭心症、安静時狭心症など)や病態による分類(不安定狭心症、冠攣縮性狭心症、微小血管狭心症など)がなされます。治療は薬物療法と生活習慣改善を基本とし、必要に応じてカテーテル手術やバイパス手術といった血行再建術を行います。ただし、不安定狭心症では早急な血行再建術が必要です。
心筋梗塞は心筋に酸素を届ける冠動脈の血流が途絶え、心筋が壊死していく病気です。心臓の機能が失われて命に関わる状態になります。症状としては強い胸痛が一般的ですが、左肩、左腕、顎、歯、背中、上腹部などに痛みが現れる場合があります。狭心症から心筋梗塞に進展することもありますが、半分以上の方が何の前触れもなく突然発症します。急性心筋梗塞では早急な薬物療法とカテーテルなどによる血行再建術が必要です。
心不全
心不全は心臓の働きが低下し「ポンプ」としての役割を十分に果たせなくなった状態です。それにより全身の各組織に必要なだけの血液が送り出せなくなって様々な症状が現れます。身体が疲れやすくなる、動悸や息切れがする、尿の量が減る、足などがむくむ、咳が出るようになる、横になると苦しく、座ると楽になるといった症状がある場合は、心不全の疑いがあります。原因によって発症のしかたは様々で、徐々に症状が悪化する場合もあれば突然発症し急激な経過で命に関わる場合もあります。
心不全の状態を引き起こす疾患としては、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症(心臓の筋肉に異常が起きる)、不整脈(拍動のリズムに異常をきたす)、さらには先天性心疾患などがあります。また高血圧やCKD(慢性腎臓病)、過度なストレスも心不全の大きな要因となります。
心不全の治療は急性期(増悪時)と慢性期(寛解時)とで大きく異なります。急性期は心臓の負担を軽減する「利尿薬」や「血管拡張薬」、心筋の収縮力を強める「強心薬」、血栓を防ぐ「抗凝固薬」などによる薬物治療に加え、必要に応じて冠動脈の血行再建術や循環補助装置などを使用した全身管理が行われます。症状が落ち着いた後は、長期的に心臓を長持ちさせることを主眼とした「心保護薬」を導入していきます。
心臓弁膜症
心臓の中に備わった4つの弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)に異常が生じ、血流が滞ったり、逆流したりすることで様々な症状が現れるのが心臓弁膜症です。主な症状として運動時の息切れや咳、むくみ、呼吸困難、倦怠感などがあります。さらに胸痛や失神発作を引き起こすこともあり、放置すると心不全に至り生命に関わる場合もあります。また心臓弁膜症があると心臓に細菌が巣食う(感染性心内膜炎)ことがあり注意が必要です。
心臓弁膜症は初期には自覚症状が少なく、多くの場合、聴診器で心雑音が認められたり、心電図に異常が見られたりすることで発見されます。原因としては加齢や過去の感染症(リウマチ熱 等)によるもの、心筋梗塞や心筋炎などの心臓病によるもの、先天的なものなどが挙げられます。加齢とともに悪化していくことが多いので定期的な経過観察が重要です。軽度の段階では利尿薬などの薬物療法を行いますが、重症となった場合、弁形成術や弁置換術などの手術、カテーテルによる治療を検討します。
不整脈
心臓は一定のリズムで1日10万回程度拍動し全身に血液を送り出しています。正常な脈拍数は1分間に50~100回とされていますが、これが50回以下だと「徐脈」、100回以上だと「頻脈」、また脈が飛ぶものを「期外収縮」といい、これらを総称して不整脈と呼びます。不整脈では心電図による検査を行います。発作性不整脈の場合は、外来での検査時に症状が無いことも多いので、24時間装着型のホルター心電図検査を行うこともあります。また運動負荷をかけた時の心電図を測定する場合もあります。
不整脈は心臓を規則正しく動かす電気信号に何らかの理由で異常が生じるため起こると考えられています。その原因としては疲労やストレス、加齢、ホルモンの異常など心臓の病気ではないことも少なくありません。しかし、狭心症や心筋梗塞、弁膜症などの心疾患が潜んでいることも多く息切れなどがある場合は心不全を併発していることもあります。
加齢とともに増加する不整脈に心房細動があります。心房細動では脈が不規則になり心臓の働きを悪くし心不全を引き起こすことがあります。また、心臓の中にできた血栓が血流に乗って流れていき大きな脳梗塞(心原性脳梗塞)を起こすことがあります。この心原性脳梗塞は脳梗塞全体の3分の1を占める頻度で、他のタイプの脳梗塞に比べ重篤となる確率が高いので注意が必要です。
不整脈の治療としては抗不整脈薬や血栓予防の抗凝固薬、ペースメーカー治療、カテーテルアブレーション治療などがあります。突然死のリスクがある不整脈では埋め込み型除細動器が検討されます。
下肢末梢動脈疾患(LEAD)
足に行く血流が悪化してしまうのがLEAD(lower extremity artery disease)です。多くの場合は動脈硬化が原因であり、以前は下肢閉塞性動脈硬化症と呼ばれていました。足が冷えやすい、しびれるといった症状のほか、歩行障害がみられるようになります。これは足に十分な血液が供給されないため、しばらく歩くと痛みが現れるのですが、休憩すると徐々に血液が供給されるため、痛みが薄らぎ、また歩けるようになるというもので、「間欠性跛行」と呼ばれます。進行すると痛みを感じずに歩ける距離は次第に短くなりますが、ご高齢者などあまり歩かない方は自覚症状が無いまま病気が進行してしまうことも多いです。さらに病気が進行すると安静時の足の痛みや難治性潰瘍や壊疽・壊死に陥ることがあり、これを包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)といい下肢切断や生命に関わるリスクがあります。また、LEAD患者さまの約半数で心臓の冠動脈硬化症を合併することが知られており、LEADがあると全身の動脈硬化症が進行している可能性があります。動脈硬化を悪化させる原因としては糖尿病、脂質異常症、高血圧、慢性腎臓病、喫煙などがありこれらの対策が重要です。
LEADは視診、触診に加えて、両手足の血圧を同時に測定するABI検査で診断し、必要に応じて超音波(エコー)検査やCT、MRI、カテーテル検査などで血管の様子を観察します。
治療としては間欠性跛行までの症状であれば抗血栓薬などの薬物療法と運動療法を基本とし必要に応じてカテーテル治療などの血行再建術を行います。一方、CLTIに至ると血行再建術や創処置を中心とした集学的な治療が必要になります。
頸動脈狭窄症
首の両側をとおり脳に向かう動脈を頸部頸動脈といい、ここが動脈硬化などで狭くなることを頸動脈狭窄と呼びます。進行すると脳への血流が障害されたり、狭い箇所で血流が滞って小さな血栓ができたりするため、脳梗塞を生じる危険性が高くなります。通常は頸動脈狭窄だけでは自覚症状はありませんが、脳が血流不足に陥った場合、一時的に脳梗塞と同じような症状を起こすことがあります。これを一過性脳虚血発作(TIA)いい、たとえ症状が改善してもその後短期間で脳梗塞に至る危険性があるので注意が必要です。
頸動脈狭窄症は聴診に加え超音波(エコー)検査で診断します。必要に応じてCT、MRI、カテーテル検査、脳血流シンチグラフィなどが行われます。治療は、抗血小板薬などの薬物療法が基本となり、重症度や脳梗塞の有無などに応じてカテーテル治療や外科的手術が検討されます。
脳卒中
突然、脳の血管が詰まる、あるいは破れて出血するなどで、脳に血液が届かなくなり、脳神経が障害された状態となることを、総じて脳卒中と言います。脳血管障害とも呼ばれ、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」などがあります。
脳梗塞は脳動脈が狭窄、閉塞することで脳の神経細胞に血液が供給されなくなり、障害か発症するものです。心房細動などによって心臓にできた血栓が脳に飛び、脳動脈を詰まらせる場合もあります。脳出血は、主に脳内に入り込んだ細い脳動脈が動脈硬化などで脆くなって破れ、あふれた血液により脳神経が障害されて発症します。くも膜下出血は、脳血管の一部(主に脳動脈瘤)が破裂して、脳と「くも膜」の間に出血が起こることで発症するものです。このほか、脳梗塞の前触れとも言える一過性脳虚血発作があります。
症状としては身体の片側にしびれや麻痺が現れることが多く、構音障害(上手くしゃべれなくなる)が現れることがあります。脳出血やくも膜下出血では強い頭痛が現れることがあり、とくに、くも膜下出血ではバットで殴られたような痛みと表現されることもあります。それに対し、脳梗塞では多くの場合、頭痛はみられません。脳卒中は命に関わったり、麻痺などの後遺症が残ったりする危険性が高く、緊急を要します。より早期の治療(4~5時間以内)が求められますので、疑いのある場合は救急車を呼びましょう。